寝たきりでものも言えない母にとって、
幸せとはなんだったのだろう?
ほんのいっとき
喜びで満たされることであったかもしれない。
身体の向きを変えてもらうことであったかもしれない。
ケアスタッフが来てくれるとき、
優しい言葉をかけてもらうとき、
窓辺のカーテンを開けてもらうとき、
小鳥のさえずりが聞こえるとき。
寝たきりでものも言えない母の世界は
どんなものであったろう?
きっと、小さな喜びに敏感になる世界、
人の優しさに敏感になる世界だっただろう。
置かれた状況によって、
幸せのかたちは変わる。
私は新しい幸せのかたちを
母に教えてもらった気がする。
(2021年4月28日)
訳者