父が亡くなった時、
音楽好きの父のために
趣味の楽団仲間が
ヘンデルの「ラルゴ」を
演奏してくれた。
それは、斎場で
父の遺骨を待っている時だった。
美しい音色で、
劫火の音はかき消された。
不思議なことに、
その後、何度も、
色々な折に、
「ラルゴ」が聞こえてくるのだった。
レストランで、
待ち合わせのロビーで、
それは流れてきた。
まるで、「わたしはここにいる」
とでも言うかのように。
父を見送って間もない頃、
まだ、寂しさが消えない頃に、
音楽の力で慰められた。
不思議なことがあるものだ。
これをシンクロニシティ―と言うのだろうか。
(2021年7月7日)
(訳者)