父は最期の時、
苦しい、助けて、と
何度も言っていた。
救急車の中で、
わたしの小さな膝の上に
うつ伏せの父を抱きながら、祈った、
苦しみが治まりますようにと。
病院のベッドで父を抱きかかえながら、
酸素ボンベの到着を待った。
医師が駆け付けてくれた時、
父はこと切れていた。
苦しみから解放されたのだ。
わたしの祈りは、聞き入れられた
望みとはちがうが、予想された形で。
誰しも穏やかな死を望むけれど、
それは約束されているわけではない。
たとえ短い時間であっても
呼吸の苦しい父にとって、それは
永遠のように感じられたであろう。
母にこのような思いはさせたくない、
それが、わたしの願いだった。
わたしはその願いを叶えられただろうか?
母の命日が過ぎ、
父の命日を正月に控え、
自分に問いかけるこの頃。
(2021年12月17日)
(訳者)