翻訳者のブログ

著者雑感 ~母の残した俳句~

母の誕生日に
母の日記を読んでみる
生前に気付かなかった
母の想いに涙があふれる

娘三人いながら
誰も母と一緒に
住んであげなかった

それがどれほど
寂しかったか
辛かったか
今頃 わかった

独り暮らしに
慣れているわたしには
思いの至らないことだった

墓に布団は着せられぬ。。。

母は俳句を詠みながら
寂しさを
紛らわせていたにちがいない

84歳の時に詠んだ句が
11句もあった
ここに残しておきたい:

*八達嶺(パタリイ)の千里一はけ青葉風

*小姐(シャオジェ)と呼ばれし記憶楡の花
  (小姐とはお嬢ちゃんのこと、中国語)

*須わに落つ一途に咲きし沙羅の花
  (沙羅とは夏椿のこと)

*春宵の窓辺にはずす耳飾り

*友逝きし日もかくありし菜種梅雨

*連れ蝶のいつしか遠し玻璃戸拭く

*おきざりの満州野(ますの)の雛や星の綺羅

*草むらを褥に白き沙羅の花

*夕あかり木蓮あまた貝色に

*銀の雨おたまじゃくしの身の軽さ

*かき消えて目裏に濃き春の虹

懐かしい、切ないほど恋しいお母さん、
わたしを産み育ててくれて
ありがとう。そして、
至らなかったわたしをゆるしてください。
(2023年9月17日記:
 2010年2月19日から2016年12月6日に逝くまで
 6年9か月余りを寝たきりで過ごした母を想う)